【学習センター機関誌から】“こころ”に触れ、“こころ”を結ぶ

水口 啓吾

放送大学愛媛学習センター客員教員

初めまして。2024年度より、放送大学愛媛学習センター客員教員に就任しました、愛媛大学教育学部の水口啓吾と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

私は、「心理学」、特に、発達心理学と臨床心理学を専門としています。みなさんは、「心理学」と聴くと、どのようなイメージを持たれていらっしゃいますか。「心理学を学んだら人の心が読めるの?」、「人を自由に操ることができるの?」といったイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません(私自身も、高校生の時は「心理学を学んだら人の心が分かるんだ!」と考えていました(笑))。実際、友人から「大学では何を教えているの?」と尋ねられ、「心理学」と答えると、「じゃ、今、何を考えているか当ててみてよ!」と言われることもよくあります。それが分かれば、私はおそらく違う未来を歩んでいたと思います(笑)。これらのイメージから、「心理学を学んでいる方とおしゃべりしたら心を読まれてしまいそうで怖い」、「他人の心を知るための学問ってちょっと好きになれない」といった、心理学に対して否定的な方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、心理学と聴くと“カウンセラー”を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。あとは、映画やテレビなどでよく取り上げられる“犯罪心理学(プロファイリング)”などを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうか。

これらのイメージはすべて間違ってはいません。しかしながら、完璧でもありません。あくまでも心理学の一側面です。「心理学」とは、自分や相手の“こころ”を深く知り、理解することで、自身の生き方(向き合い方)、他者とのかかわり方、そして、社会との繋がり方を捉えていく学問です。言い換えれば、『“こころ”に関することであれば何でもOKな学問』と言えるかもしれません(笑)。私たちが普段の生活で見ているもの、聴いているもの、話していること、感じていること、学んでいることを心理学では扱います。また、家族(パートナー・親子・きょうだい)関係、友人関係、学校や職場での人間関係から生まれる疑問や困難さ、心の問題(疲れ)も心理学では扱います。これらのテーマへの追究が、「自分ってどんな人間なんだろう」、「自分はこれからどのように生きていきたいんだろう」、「自分の今の状態はどうしたら解決できるんだろう」、「他者と上手く付き合うためにはどうしたらいいんだろう」、「あの人はどんな人なんだろう」、「人はどうしてこんな状況ではこんな言動を取っちゃうんだろう」といった、自分の“こころ”や他者の“こころ”を理解するためのきっかけとなります。そうして、“こころ”に触れて、感じて、知っていきながら、自分の“こころ”と他者の“こころ”を結んでいくことで、自分らしく生きていくためのヒントを見つけることができるかもしれません。心理学とは、一人一人が自分にとって一番大切なヒントを見つけるためのお手伝いをさせてもらう学問なのではないかなと私は思っています。

放送大学で学ばれているみなさんにとって、ここでのたくさんの人々との出会いやたくさんの学びが、みなさんご自身の“こころ”とどのように結ばれていき、その結びが、これまでのご自身の「生き方」、今のご自身の「在り方」、そして、これからのご自身の未来への「歩み方」と向き合ううえで、どのようなヒント(気づき)となるのか。ぜひ、放送大学での活動を通して、みなさんお一人お一人、答えを見つけていただければ嬉しいです。同時に、放送大学に関わらせていただく機会をいただいた私自身も、ここでの出会いや学びが、自身の“こころ”とどのように結ばれていくことで、どのような変化(発達)を遂げていくのか、とても楽しみです。

これから、どうぞよろしくお願い申し上げます。


愛媛学習センター機関誌「坊っちゃん」第118号(2024年12月発行)より掲載

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