吉村 幸則
放送大学広島学習センター所長
私達の日常生活において、都市・地域のスマートシティ化は急速に進んでいます。家電や社会インフラの高度なスマート化も進んでいますし、生成AIも普及し、自動車などの自動運転も実用化に近くなっているなど限りがなく進化し続けています。スマート化は、我が国の科学技術・イノベーション基本計画で述べられている、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会であるSociety 5.0を具現化するものでしょう。
農林水産業や製造業でもスマート化は進み、省力化と生産効率が高まっています。農業においては、データを活用した生産により、経験不足の人も就農しやすくなるだろうと聞きます。畜産分野では、家畜の管理に多くの時間を要しますが、搾乳ロボットや自動給餌装置の導入により作業の効率が高まっています。搾乳ロボットは乳牛が搾乳してほしい時に自分でロボットに入り、乳房の消毒や搾乳が自動的に行われるものです。自動給餌システムは、適量の餌をシステムが自動で与えるものです。搾乳ロボットも自動給餌システムも人の作業をほとんど必要とせず、一連の作業を見事にこなします。作物を生産する分野でも、ロボット技術やICTを活用して超省力化が進んだり、高品質の野菜等が生産されたりしています。先端技術をとりいれた農業分野の発展を見据えて、広島県ではロボットやICT等の先端技術を活用して生産性を大きく向上させるスマート農業を推進しています。「食料・農業・農村基本法」の改正法でも、スマート技術を活用した生産性の向上などに取り組むことが盛り込まれています。ただ、こうしたスマート化による省力化のメリットは大きいのですが、動物も植物も生き物ですから、生きている物として丁寧に接することも大切です。
社会システムのスマート化はいろいろなことが便利になるように、そして高齢者等の支援にもなるように、これからも進化をつづけることと思います。一方で、日常生活で人と人とのつながりは私たちの心の支えになりますし、動物や植物を育てることに喜びを感じる人も多いでしょう。私たちは進化するスマート化システムを利用しつつも、人とのつながりや、動物や植物に優しくすることで得られる心の豊かさも大切にすべきではないでしょうか。広島学習センターでも、社会のシステムの流れと同じようにDX化が進んでいます。公開特別講座や学習相談の予定、往還ノートなどセンターのホームページに掲載されています。学生の皆さまには、このDX化にご理解とご協力をお願いいたします。
広島学習センター機関誌「往還ノート」第254号(2024年7月発行)より掲載