【学習センター機関誌から】『生成AIの「脅威」と人の「煩悩」、本当に怖いのはどっち?』

和歌山学習センター客員教授
原田 利宣

昨年流行ったもののひとつに生成AIがあります。皆さんもニュースなどでお聞きになったかと。また将来、自分の仕事が奪われるのではないかと、漠然とした不安をお持ちの方も多いのでは。ここで、人工知能(AI)とは、人の脳(特にニューロン)の働きを数学的にコンピュータ上で表現し、さまざまなパターンの入出力データを学習させたものです。生成AIとは、その学習された人工知能を使って何らかの入力データを与えるとそれに対応した新しいデータを生成するものを指します。生成できるデータには、文章、音声、画像、プログラムのソースやアプリなど、さまざまな種類のものがあります、具体例をいくつかお話しします。

まず、言語生成AIでは、昨年話題になったOpenAI社が開発したChatGPTが代表です。ChatGPTは、ニュース記事、Web上の文書、小説、SNS上での会話ログなどから大量の文書データ(これをコーパス(Corpus)という)を収集し、文法、語彙、文脈を学習し、それを利用して自然な文章を生成します。この言語生成AIは、すでに自動翻訳や自動の問い合わせ対応など幅広い活用が試みられています。ただ、こんな便利なものができると、良からぬものに使うのも、また人間の“煩悩”。学校でレポート課題が出ると、そのテーマをChatGPTに入力すると30秒もかからず、それっぽいレポートを書いてくれます。私も自分の授業で出題するいくつかのテーマをChatGPTに入力してみました。出力結果は「優(80点以上)」をあげたくなるレベル。内容もですが、日本語が上手!一応、受験戦争を経験した大学生よりも。学生が自分で書いたようにみせるには、ChatGPTの出力をわざと稚拙な表現に変えるとかしないといけないのか!?

次に、画像生成AIです。画像生成AIとは、画像を自動生成する人工知能技術のことです。例えば、「公園でお母さんと子供が遊んでいる風景」(これをプロンプト(Prompt)という)と入力すると学習済みの画像データを合成して実在しない公園、母親と子供の画像を複数枚、あっという間に自動で生成してくれます。画像生成AIが出たとき、私はデザインが専門なので、自動でどこまで新しい製品デザインやグラフィックデザインができるか知りたくて、時間を忘れていろんなプロンプトを入力して遊んでしまいました。結論的には、プロンプト次第では、まずまずの面白いデザインを複数案、数分かからず提示してくれます。Web上にイメージの異なる多くの種類の製品画像が存在する、例えば時計なんかがやはりいいデザインを出力してくれました。新人デザイナーよりは、もしかしたら能力高いかも。ただ、この技術も良からぬものに使う人間が出てくるのも事実。ある作家の作品を学習して、存在しない新しい作品を生成し、それをあたかも自分の作品のようにWeb上で公開したり(著作権侵害)、洋服を着た女性タレントの画像からヌード写真を生成したり(肖像権侵害、わいせつ物頒布等罪など)。とにかく人工知能の脅威以上に人の煩悩も相当怖いと思った今日この頃です。

ちなみに、このコラムはChatGPTに頼らず、煩悩を断って自分で書きました!


和歌山学習センター機関誌「てまり」第103号(2024年4月発行)より掲載

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