私が地元企業に就職したのは放送大学の授業が開始された年でした。
特許室に配属され管理担当を任されたものの、特許で扱う最先端技術が文系の私にはわからず、仕事に悩みました。上司がいうには、「知財をやるには技術―法律―英語が必要」とのことでした。
そんな折、テレビをつけたら放送大学で英語の授業が流れていました。
私の住む諏訪地域は全国に先駆けて学習センター設置の陳情書を提出し、地元ケーブルテレビ局で放送大学の番組放送を開始していたのでした。1987年には諏訪地区学習センター(現長野学習センター)が設置され、学生受け入れが始まりました。
私も募集要項を取り寄せてはみましたが、仕事や子育てに追われ、時折テレビの授業を覗くだけで、教育は子供ファーストと諦めていました。
その後、仕事を続けながら、子育ても終わり、気がつけば五十代半ばとなっていました。
イノベーションだの、ITだの社会の流れについてゆけず、リケジョへの憧れもあって、科目履修生でおそるおそる物理を受講してみました。
長野学習センターの職員さんの温かい言葉に励まされ、「自然と環境コース」の全科履修生となり、現在に続いています。
放送大学は、どのコースに学んでも自由に科目を選択することができます。
初歩からの物理、数学、化学から宇宙に至るまで、今まで知らなかった世界が私の前に広がりました。
「生涯学習を考える」を聴いて来し方行く末を考えたり、エクセルの面接授業を聴いて仕事に役立てたり、語学や文学の授業を聴いて心を躍らせたり、参考図書を読んで思いをはせるのが至福のひとときです。
自然科学は「巨人の肩の上に立つ」という言葉で例えられ、先人の研究成果の上に研究を積み重ね、発展を続けてきたといいます。他の学問や知恵も同じです。
先人のおかげで地元に学習センターをいただき、どこでもいつでも教養が学べる放送大学、まだまだ学びは浅いですが、学びを通して心豊かに年を重ねてゆけたらと思っております。
プロフィール
1961年 長野県諏訪市生まれ
1985年 大学卒業後、地元の企業へ就職
2016年 放送大学長野学習センターに科目履修生として入学
同年 2学期、全科履修生として編入学
2020年 自然と環境コース卒業、情報コースに再入学
2023年 情報コース卒業
現在、社会と産業コースを履修中
※2023年6月26日 本誌掲載の記事です。
公開日 2023-08-23 最終更新日 2023-08-23