木村 昌彦
放送大学神奈川学習センター 客員教授
(専門分野:柔道、体育科学、体力科学)
新しく改訂された学習指導要領では、各教科の目標及び内容が育成を目指す資質・能力の三つの柱(「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性」)に再整理されて明確に示されました。
体育分野の内容の取扱いでは、前述の三つの柱を踏まえた内容構造に見直され、12年間の系統性を踏まえた指導内容に加えて、運動やスポーツとの多様な関わり方が重視され、より明確化されました。
武道領域においては、現行どおり他の運動領域とは異なり中学校で初めて履修する内容として示されています。
しかし、内容の取扱いでは、我が国固有の伝統と文化への理解を深める観点から、日本固有の武道の考え方に触れることができるよう「柔道、剣道、相撲、空手道、なぎなた、弓道、合気道、少林寺拳法、銃剣道などを通して、我が国固有の伝統と文化により一層触れることができるようにすること」という文言が新たに表記されました。
2019年度の全国的な武道種目の実施状況は柔道が6割を超えています。しかし柔道を含む武道領域は、球技や水泳などの領域とは異なり、児童生徒の発達段階に応じて小学校から系統的にカリキュラムが編成されていない現状が存在します。
学習指導要領改訂の基本的な考え方には「児童生徒の発達段階を踏まえて小中高を通じて系統性のある指導」が明記されています。このような状況の中で小学校体育との運動技能のスムーズな接続を考えると、体つくり運動領域が最適であると考えられます。
そこで現在進めている研究は小学校から中学校への運動技能のスムーズな接続を図っていく観点から、体つくり運動領域の多様な動きをつくる運動(遊び)、体力を高める運動、において柔道の基本的な動きを運動内容として取り入れた教材を開発して、汎用的に実施できる指導計画および指導案を提案することを目的としています。
神奈川学習センター機関誌「神奈川学習センターあきだより」第92号(令和4年12月)より
公開日 2023-02-17 最終更新日 2023-02-17