大分学習センター越智 義道所長 日本計算機統計学会賞を授賞

2025年6月12日(木)から14日(土)の間、カクイックス交流センター(かごしま県民交流センター、鹿児島市)で日本計算機統計学会第39回大会が開催されました。その6月13日(金)16:50から同センター2階中ホールにおいて行われた総会・授賞式において、放送大学大分学習センター所長越智義道特任教授が2024年度日本計算機統計学会賞を受賞され、表彰状ならびに記念品を、学会長の渡辺俊彦氏(日本CRO協会)から授与されました。

受賞理由は以下のとおりです。
「越智義道氏は1999年から2014年の15年間にわたり、本学会の評議員を務められ、2001年から2006年には欧文誌編集理事、2015年から2016年には国際交流理事を歴任されている。また、生物統計・計算機統計学研究の第一人者として、カテゴリカルデータ解析や統計計算アルゴリズムの研究において卓越した成果を挙げられている。
大分大学在籍時には、多くの優秀な統計研究者を育成され、現在では放送大学・大分学習センターの所長として、生涯学習の一環として統計科学の啓発に尽力されている。さらに1990年から開始された大分統計談話会では、設立初期の主要メンバーとして多大な貢献をされ、本談話会は2025年2月時点で第71回を迎えている。
以上の通り、越智義道氏は本学会に多大な貢献をされるとともに、計算機統計学の発展にも大きく寄与されており、日本計算機統計学会賞を受賞するに値すると考えられる。」

日本計算機統計学会は1986年に設立され、統計学および計算機システムの研究、開発、応用にたずさわる者の協力および国際研究交流を通じて、我が国における計算機統計学の進歩・発展を図ることを目的として、大会やシンポジウムを含む研究集会や研修を行うほか、和文誌:計算機統計学 (Bulletin of the Computational Statistics of Japan )、欧文誌(統計関連学会連合としての欧文誌):Japanese Journal of Statistics and Data Scienceを発行するなどの活動を行っています。学会会員数514名、学生会員数61名、賛助会員20社、団体会員1社(2024年4月9日調べ)となっています。

受賞者の言葉

この度は思いがけず、栄誉ある日本計算機統計学会の学会賞をいただくことになり、大変にうれしく思っています。私と統計学との本格的な関わりとしては広島大学理学部数学科での卒業研究からということになりますが、その後の大学院でも数学専攻としてもっぱら数理統計学の分野から統計の世界に入っていったということになります。学部では統計的推測論を、修士では時系列解析での推定量分布の漸近展開(近似方法の一つ)について学んでいました。大学院の修士号を得た後、広島・長崎にある財団法人放射線影響研究所で行っている原爆被爆者の方々の健康調査の統計解析の部門に研究員として職を得ることができ、本格的な実データの分析、特に被曝放射線量が身体に及ぼす後影響にかかる統計的な分析を担当することになりました。そこで、生物統計学との関りを持つようになります。健康調査に関するデータには身体測定値や血圧値のような連続的な値をもつデータもありますが、疾病の種類や身体の状態を表す質的・離散的(カテゴリカル)なデータも存在します。研究所に入所した当時は、こういった質的・離散的なデータの分析では分割表という表形式にまとめられた集計表をもとに、観測された出現頻度を比較検討することが行われていました。ただ、そこで用いられている統計的手法は学生時代にはあまり学んだことのないもので、それぞれの手法の妥当性はそれなりに確認していましたが、それらを俯瞰して見通す視点が十分に持てず悶々としていました。

そんな折、幸運なことに、研究所の統計部門と米国の大学の間でスタッフの交流を行う話が持ち上がり、シアトルにあるワシントン大学の生物統計学科に大学院生として留学する機会を頂きました。そこでの講義の中で、釈然としていなかった質的・離散的なデータの各種分析法は、基本的にはそれらのデータについて想定される理論分布を基にする最大尤度理論として整理されることを学び、目からうろこが落ちた思いでした。その後、その分布仮定を緩めた柔軟な枠組みも学ぶことになりますが、離散データの分析にかかる大きな柱を得たような気持ちになったことを思い出します。
統計的な分析では、得られたデータから具体的な計算手順を経て、意思決定に必要な情報を抽出することになりますが、必然的にその計算可能性が問題となります。最大尤度理論もずいぶん以前から研究されて、その理論的な性質も多くの事が知られていたわけですが、実際に使える理論的側面はそれを具体的に計算することのできる道具に依存することになります。入所した当時の研究所では、その時期の能力としてはそれなりの計算機を利用していましたが、分割表による離散データの分析法はその理論の漸近的(多くのデータが存在するときに妥当性が保証される性質)な近似の一つであったわけです。そしてこの留学の時期あたりから、計算機の処理がハードウエア・ソフトウエア両面で急速に高速・高機能化し始め、統計的なデータの分析も、メインフレームと呼ばれるそれを稼働させるために専用の部屋を必要とする中・大型計算機から、研究室内に設置可能なUnixベースのワークステーション(EWS,Engineering Work Station)と呼ばれた小型機、そしていわゆるPC(Personal Computer)で実施されるように変化しはじめていました。

米国への留学後、放射線影響研究所に復職し、再び医学・生物学データの分析の仕事に復帰したわけですが、ちょうどそのころにMicrosoft社のMS-DOSをOSとする、NECのPC98が研究室に置かれ始めました。先に述べたように、統計的な技術はそれを処理する計算環境に依存することもあり、より計算機のことを知りたいと思い始めたときに、お誘いがあり、大分大学の工学部組織工学科に移ることになりました。この学科はいわゆる情報工学科でしたが、その設立当時から統計部門を持ち、専門家が傍にいてその方々から直接計算機のことを学びながら統計の研究を継続できるというのが転職の大きな理由でした。
組織工学科はその後知能情報システム工学科に名称変更しましたが、そこで、計算機の基礎から学び、同時に離散データの解析、とくに超過変動の処理にかかる分析法の開発を中心に研究を進めてゆきました。離散データは、よく用いられる典型的な離散確率分布で想定する確率モデルでは説明しきれない余剰の確率変動を示すことがあります。これを超過変動と呼びますが、それを適切に処理しなければ統計的な結果に誤謬が生じることになります。これらの研究を進めていく間にも、ますます計算機や情報機器の処理能力が上がってきて、研究室内で用いるPCをネットワークで接続し分散並列処理が可能になり、またPC単体でも並列計算が可能になってきました。こういった計算機の処理能力を十分に活用した計算機集約的な統計解析手法も各種提案されるようになり、私の研究室に配属になった卒研生や院生たちと、そういった環境下での効果的な計算アルゴリズムの開発について取り組んでいました。

現在では、多くの優れた統計ソフトウエアが用意され、研究者が容易にそれらにアクセスできる状況になってきていますので、往時のような開発の苦労なしに結果を得ることができるようになってきています。ただ、用いるソフトウエアと用いられているアルゴリズムについては十分な配慮が必要なことは言うまでもありません。AIによって、現在手にしているデータについて、何か適切な解析の実施を求めれば、それなりの結果が提示される時代がすぐそこまで来ています。ただ、統計的な解析は、データのもととなる現象の理解を必要とし、その理解のもとに先の見通しを試みる活動であり、その主体が人であることを常に意識しておく必要があるように感じています。

これまで多くの諸先生方、先輩方、同僚、学生、仲間の皆さんに支えられて教育・研究活動を継続してくることができました。そのおかげでこの賞をいただけたものと考えています。ご支援に心よりお礼を申し上げたいと思います。放送大学にあっても、受賞理由にも触れられていましたように、生涯学習の一環として、統計的な考え方や見方など、統計的なリテラシーの向上に、これまでの経験を活かしてゆきたいと考えています。

記念品
表彰状

関連リンク

公開日 2025-08-29  最終更新日 2025-08-29

関連記事
インターネットで
資料請求も出願もできます!