【学習センター機関誌から】自分を見つめ直すうえで

宇都宮大学准教授
石川 隆行
(専門:発達心理学)

心理学を学び始めた学生の頃、指導教官が「心理学は実学です」と説明されたことを覚えています。その例として、専門とする発達心理学のなかで、ご存知の方も多いと思いますが、エリクソンの発達理論を紹介していました。学生であった当時は、正直なところ、わからない部分が多く、理解が十分にいたっておりませんでした…。その後、エリクソンの発達理論を改めて考えてみると、自分を見つめ、人生を振り返るうえで重要な理論であることに気づかされます。


アメリカの心理学者であるエリクソン(Erik Homburger Erikson)は、心理社会的発達理論を提唱し、発達心理学の発展に大きく貢献した人物です。この理論では人生を8つの発達段階(ライフステージ)、すなわち「乳児期」「幼児前期」「幼児後期」「児童期」「⻘年期」「成人前期」「成人後期」「⾼齢期」に分けました。また、エリクソンは、各発達段階において心理社会的危機として発達課題を示し、発達課題を解決していくことで人間は健全な発達を遂げることができると述べました。

少し具体的に見ていきますと、エリクソンの理論の中で、多くの方がご存知のものが、自我同一性(アイデンティティ)という独自の概念が含まれる第Ⅴ段階の⻘年期(自我同一性の確⽴ 対 自我同一性の拡散)ではないでしょうか。この段階では、自分の将来や生き方を模索し、進むべき方向を明確に捉えると、自我同一性が確⽴します。一方、自分が何者で、どのような生き方してよいのか見いだすことができないと、自我同一性の拡散と呼ばれる状態になります。プラスとマイナスの2つの側面を経験し合いながら、⻘年期の心が完成するというわけです。⻘年期は、自分について思い悩む時期として表現されますが、エリクソンの理論から、その根拠が見えてくるように思います。


⻘年期を例として取り上げましたが、ここ最近、自分の生き方を振り返り、自身の心の内面に目を向け、自分を見つめ直すという機会が子どもから大人まで重要となっています。エリクソンの理論については、一般書から専門書まで数多く著されています。何かの折、それらを手に取ると、過去、現在および今後の生涯発達をイメージでき、人生を考える様々なヒントを私たちに与えてくれるかもしれません。

私自身執筆しながら、エリクソンの発達課題を見てみると、現在の自分の発達段階、解決すべき課題が最終段階に迫っていることを考えさせられています。今後、豊かな自己統合ができるように、ライフステージを充実させていきたいものです。


(栃木学習センター機関誌「とちの実122号」より)

機関誌「とちの実」バックナンバーはこちらから→https://www.sc.ouj.ac.jp/center/tochigi/about/magazine.html

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