岩手学習センター客員教員/岩手大学准教授
菊地 洋
(専門分野:公法学)
今年は統一地方選挙の年です。岩手を含む3県は、震災の影響で半年遅れの選挙となって4回目となりますが、皆様のお住まいの町では選挙がありましたか。この号が発行される時期は、岩手県知事選挙・岩手県議会議員選挙が終わり、結果が判明している頃でしょうか。皆さんは、投票を通じて自分の意思を表明しましたか?
私が担当する教育学部の学生では、国政への関心はそれなりにあるのですが、地方自治についてはさほど関心を持たないという学生が多いです。将来、教員として着任した町のことを教える立場になる人が、こういった姿勢でよいのかと心配になってしまいます。
私は、国政と違い、地方自治の方が、住んでおられる人々の声が届きやすく、政策などへ反映される可能性が高いという点で、とても身近なものであると考えています。例えば、皆さんがいつも利用される公共サービスは、各自治体が担っていますね。ごみの回収・処分については、自治体の役割ですが、それを無料/有料とするのか、有料の場合のゴミ袋の価格設定などは、行政(首長)が計画、提案したものを議会が審議し、最終決定をしています。この行政のトップである首長、議会の議員ともに、私たちが選んでいます。これを二元代表制といいます。選ばれた人たちが、4年間に実際どのようなことを行ってきたのかをチェックする機会が選挙になります。一部の自治体では、対立する候補者がいなく無投票で首長が決まることや、議員定数と候補者が同数で選挙することなく議員が決まる場合もありますが、それは私たちが候補者をチェックする機会を失ってしまうことになるので、残念でなりません。
実際、地方議会では、議員のなり手不足が深刻な問題になっています。次の世代へ引き継ぐことができず、議員の高齢化を引き起こしています。私は、議会がもっと私たちに身近な存在にならないのかと、一関市議会の皆さんと一緒に検討をしています。議会の広報活動はもちろんですが、私は住民の声を拾い審議することができるという点で、住民が「陳情」「請願」という制度を積極的に活用してもよいと思っています。私は、中学校の先生と協力して、公民の授業で、地方自治の単元で「盛岡市へ政策提言をしてみよう」という企画を行ったことがあります。中学生や高校生の時に、自分たちの声が反映された街づくりができたという成功体験を持つことができれば、将来どの街へ住むことになっても、地域への関心を持ってもらえるものと考えています。
最後にこの言葉を皆様へお伝えしておきます。
「地方自治は民主主義の学校である」(ジェームス・ブラウン、イギリスの政治学者)。
岩手学習センター機関誌「イーハトーブ」190号(2023年9月発行)より転載
公開日 2023-10-24 最終更新日 2023-10-24