柳樂 真佐実
放送大学島根学習センター
教養学部教養学科 心理と教育コース 卒業生代表
史上最高の気温を記録したといわれる夏もすぎ、色づく田んぼや虫の声に秋を感じる日々となりました。本日は、私たち卒業生のために学位記授与式を開催していただき、誠にありがとうございます。お忙しい中、ご出席いただいた来賓のみなさま、島根学習センターのみなさまに対して、卒業生を代表して、厚くお礼を申し上げます。
私は公衆衛生業務に従事する医師です。2013年、42歳の時に放送大学に入学しました。2年間の感染症対策に関する専門的な研修を受けて東京から島根に戻ってきたタイミングでした。入学のきっかけは、思い返せばいわゆる中年の危機、というものだったのかもしれません。仕事のストレスや、人間関係などで思うところがあり、心理学を体系的に学びたいと思いたちました。また、仕事である感染症対策でも、予防のための行動をとる人ととらない人の分かれ目はどこにあるのだろうという問いを持っていましたし、リスク管理、リスクコミュニケーションを学びたい、という希望もありました。放送大学には様々な心理学系の科目が展開されていますし、面接授業で心理学実験が開講されていることにも魅力を感じ、「心理と教育」コースへの入学を決めました。
しかし、心理学を学べば、もうちょっと世渡り上手になったり、仕事が捗るようになったりするのかなぁなどという下心は、学びをすすめると完膚なきまでに粉砕されました。その代わり、人の心の複雑さや、心の動きを観察しようとする心理学実験の巧みさなど、学問としての面白さに圧倒されました。心理学関連の科目と並行して身体や保健衛生に関連する科目も学び始め、社会福祉に関する科目に手を伸ばし、文学や歴史などの科目へと、在学中に興味の幅も広がってゆきました。本棚に並ぶ教科書は私の足跡であり、今の私を支えてくれる礎でもあります。
そして、改めて感じることは、放送大学という学びの場を整え、守ってくださるみなさんへの感謝です。学習センターは、面接授業の会場であることはもちろん、コロナ禍前までは試験会場でもありました。試験時間の合間に必死で次の試験の準備をしたことも良い想い出です。図書館では充実したラインナップの電子ジャーナルを閲覧することができましたし、映画館や博物館で「大学生料金」が利用できる、というのもうれしかったです。また、ふとしたことでお互いが放送大学の学生だとわかると、距離が一気に縮み、好きな科目の話で盛り上がることができました。
放送大学は、この11年間、私の学びの伴走者として時に手を引いて導き、時に背中を支えてくれました。今日、いったん区切りとしての卒業を迎えますが、これからも私の学びは続きます。10月からも新たな気持ちで、学生生活を続けますので、どうか、よろしくお願いいたします。
最後に、放送大学がこれからも発展し、もっと素晴らしい学びの場となっていくことを願っています。ご指導くださった先生、学習センターのみなさま、本当にありがとうございました。
島根学習センター機関誌「だんだん」第145号(2024年10月発行)より掲載