菊地 淑人
放送大学山梨学習センター客員准教授

「いつでも、だれでも、自由な学び方を」というコピーのとおり、放送大学の放送授業は全国どこでも受講可能、学生も各地に住まわれています。他方、学習センターの「ローカル」志向は放送授業とは対照的です。面接授業はご当地を対象にするものも多い気がします。客員教員ゼミも(少なくとも私のゼミは)県内を対象にしたトピックが多く登場します。
日本全体をカバーする全国スケールと学習センターによる地域(ご当地)というスケールという2つの空間スケールが当然の如く共存している放送大学という学びの場はなんとなく不思議な感覚もあり、面白さ(魅力)もあります。

そんなことを考えつつ、この巻頭言に何を書こうかと、全国の学習センターの機関誌を眺めていたら、ここにも新たな「ご当地」を見つけました。機関誌のタイトルです。
放送大学の「機関誌」という同じプラットフォームでありながら、タイトルは地域の個性に溢れています。
山梨学習センターの『おいでなって』は方言(「いらっしゃ~い」)に由来しますが、他の学習センターの機関誌でも地域に根ざしたタイトルが溢れています。
地域文化を研究対象とする身としてそこはかとなく掻き立てられ、放送大学ホームページに掲載された学習センター機関誌のタイトルの傾向を簡単に整理してみました。
結果、現在発行されている50機関誌のうち30機関誌が所在する地域や場所にちなんだタイトルになっています。
その由来は、地域の自然環境(山・川・動植物など)(8)、地域の文学・伝説(5)、古地名(4)、センター所在地や建物の歴史(4)、地域の方言(4)、地域の歴史(3)、地域資源・特産品(2)とさまざまです(括弧内は誌数)。
ちなみに、山梨学習センターのように方言由来の機関誌は、ほかに『ばっけ』(秋田学習センター/「ふきのとう」の意味)、『だんだん』(島根学習センター/「ありがとう」の意味)、『おっしょい』(福岡学習センター/「ゆっくり」の意味)があるようです。
機関誌も紙媒体での配布からオンラインへの切り替えが進んでいます。この『おいでなって』を眺めるついでに、他のセンターの機関誌にも「旅」すると新たな発見があるかもしれません。
・・・と、巻頭言の内容を考えるためにみた全国津々浦々の学習センターの機関誌を見たはずが、そのタイトルの話だけで字数に達してしまいました。
とにもかくにも、意図せずともごく身近なところにさまざまな「地域」/「ご当地」があふれています。日常のふとしたことから他所に思いを馳せることも一興かと思います。
山梨学習センター機関誌「おいでなって」通巻95号(2025年1月発行)より掲載