【学習センター機関誌から】健康診断結果を「予防」に活かしましょう

小野田 敏行

放送大学岩手学習センター客員教員

「公衆衛生」は、平たく言うと「みんなの健康」のことで、人生の様々な時期や環境での「保健」を扱うのが「公衆衛生学」です。当然、病気になりにくくする「予防」も扱います。「予防」は、病気にならないようにすることだけではなく、病気を早く見つけて早く治す、あるいはリハビリテーションや社会のバリアフリー化などで社会復帰を図ることも含みます。

さて、皆さんは健康診断を定期的に受けていますでしょうか。受けている場合、その目的は何でしょうか。前述の「病気を早く見つけて早く治す」のためということでしたら半分正解、半分間違いです。現在定期的に行われている一般的な健康診断の項目は体格、血圧、尿、血液検査、胸部エックス線、心電図などです。もちろん、これらの検査で直ぐに治療を開始すべき状態であるとわかることもあるのですが、多くは「正常範囲から外れた状態」として、生活習慣に注意して3か月後に受診して経過をみて下さい、等となります。

血圧を例に挙げましょう。血圧が高いと将来、脳卒中や心臓病を起こしやすくなることが今までの疫学研究によって、かなり精密にわかってきています。であるならば、血圧が少しでも高い人は全て受診して薬を飲むのが良いのでしょうか。そうではありませんね。血圧がかなり高い人や他のリスクを重ねて持つ人は高リスクなので服薬治療、そこまでではない人は生活習慣に注意して様子をみる、その上で改善が十分では無い場合には服薬治療を考える、という流れですので、前述の正解の残り半分は「リスク状態を早く知って早く対応する」となります。

このように、現在の健康診断の目的は、リスクが高い状態の発見に変わってきています。要受診ではなかったからこのままで良いんだ、では無く、健康診断でわかったリスク状態の程度から、これからどうしたらより良いのかを考えましょう。経過をみてもらうには「かかりつけ医」が良いでしょう。ネットでは厚生労働省作成のホームページ「e-ヘルスネット」が生活習慣病の予防についてよくまとまっていますので是非参考にして下さい。


岩手学習センター機関誌「イーハトーブ」第198号(2025年1月発行)より掲載

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