清水 満幸
放送大学山口学習センター客員教員


こんにちは、皆さん。
本年4月より、客員教員として山口学習センターに籍を置くことになりました清水です。一応、担当する分野は民俗学ということになっています。
民俗学と聞いてもイメージができないとされる方は多いと思います。なかなか端的にお伝えすることが難しいのですが、民俗学においては、昔から今に伝えられている行為や言葉などをもとに、私たちの暮らしの在り方とその移り変わり、伝えられているコト・モノの意味や意義などを明らかにしていきます。
そして、過去から現在に至る身近な人たちの思考や行動の特性を知ることで、現代の暮らしにおける課題を見出し、未来の心豊かな暮らしのあり方を展望するヒントを得ようとします・・・・と書いてはみましたが、何だか良く分かりませんよね。
一つ例を挙げてみましょう。現在、私が暮らす山口県内のとある地域では、例えば畑の実りのお裾分けや旅のお土産などをいただいた際に、その時に家にある物を何でも良いからささやかな返礼として渡すことがあります。これを「イレゾメ(入れ初め)」と呼んでいますが、「ハガキ一枚でもマッチ一箱でもエエから(ハガキもマッチも今や家庭に常備されるものではありませんが)イレゾメにする」と昔は言われていたようです。
なぜその様なことをしてきたのでしょうか。このイレゾメに限らず、私たちの日常の暮らしの中に、「なぜ?」と思われる行為や言い伝えなどがありませんでしょうか? 民俗学を学んでいくと、それらの意味や意義が次第に明らかになってきます。昔からそうしているからとか、そう言い伝えられているからとかで終わらせることが、やがて勿体ないと思えるようになります、多分。
それだけではありません。フィールドワークを通じて、文字として残されてきた歴史資料などからだけは分からない、多くの市井の人たちの生きてきた証を様々な形で記録し資料化して次代に伝えることや、現代を生きる自分たちの暮らしを大切にしつつ、先人から託された民俗文化を、多くの人たちと共有し引き継いでいくというようなことにも、次第に興味が持てるようになるのではないかと思っています。
学習センターにおいては、ゼミや公開講座に取り組むことになっています。先に少し触れた民俗学や、暮らしの中で生み出され使われてきた道具(民具、先人の知恵の塊)について学ぶ民具学の成果をご紹介したいと考えています。
また、これまで博物館の生活文化担当学芸員として、地域の皆さんと一緒に、地域の特質を様々な分野から再発見して共有するいわゆる地域学にも取り組んできましたので、皆さんに、民俗学や民具学、地域学の入り口に立っていただきたいとも願っています。
この度は、これまでを振り返り、あらためて学びなおす機会をいただきとてもありがたく思っています。「なぜ?」から始めて、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
山口学習センター機関誌「とっくりがま」第111号(2025年7月発行)より掲載










