私が放送大学に入学する二年前、義母が脳梗塞で倒れ、仕事を辞め、介護をすることになりました。夫は単身赴任で県外にいましたので、二四時間義母との生活が始まりました。
自分自身それほど苦には思いませんでした。それでも自分の時間を持てないことに少しずつ心身の疲弊が積もっていきました。
そういうときに家の近くにある放送大学のパンフレットを見ました。若い頃に文学を夢見た思いがよみがえりました。自宅にいてもいつでも勉強ができる文面に心躍りました。
科目履修生として登録し、国文学入門の教科書が届けられたときの嬉しさは今も忘れられません。選科履修生を経て、全科履修生として登録して面接授業を受けられたときもひとしおの感がありました。
平成二十七年に人間の探求コースを卒業し、心理と教育コースに再入学しました。
その間私が放送大学の学生として本当に自覚した出来事がありました。鹿島正裕前センター長の提案で石川学習センターに平成二十六年から地域創生研究プロジェクトを組織し、地域の実情や調査を通して、地域創生・活性化の課題に取り組み、報告書をまとめ上げることになりました。
一年目は「地域社会の国際化」のテーマで私は「企業における外国人労働者の実態調査」で報告し、二年目は「金沢城下町創生」、三年目からは石川学習センターが立地する野々市市に絞り込んで野々市市民と共同研究をしながらの調査研究となりました。最後のテーマは「野々市市の椿を観光資源に」としました。
その間多くの方々にインタビュー調査をさせて頂きましたが、相手の方は私自身ではなく、放送大学のフィルターを通して私を見ているのだとつくづく実感しました。その時は緊張も覚えましたが誇りも感じました。
実質四年間の活動でしたが、自分が放送大学を背負っているような感覚を持てたことは私自身の宝物となりました。心から感謝いたします。
プロフィール(きだ ゆみこ)
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1951年石川県生まれ、石川県育ち。
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1999年放送大学石川学習センターに科目履修生として入学。
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その後、選科履修生を経て全科履修生となり2015年に人間の探求専攻を卒業。
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現在は心理と教育コースを履修中。
趣味は読書。 石川学習センターで、俳句と文芸サークルで活動中。
※2021年4月本誌掲載の記事です。
石川学習センター https://www.sc.ouj.ac.jp/center/ishikawa/
公開日 2021-06-23 最終更新日 2021-06-23