【学習センター機関誌から】言語習得理論と英語の学び方③

沖縄学習センター客員教員 大城 賢
(専門分野:英語教育学)

 

 

 

 

ローレンツ(1903~89)はハイイロガンのような雛(ヒナ)は生まれて初めて目に映った動くものを見ると、それについていく習性があることを発見しました。たとえそれがおもちゃのガチョウであってもヒナはそれについていくのです。これが有名なimprinting(刷り込み現象)です。

そして彼は、このimprinting が成立するのは、生後5時間から24時間ぐらいで、それ以上経つとimprinting は起こらないことを発見したのです。つまり、ある習性を身に付けるには、それを身に付ける期間があって、それを過ぎるとなかなか身に付けられないと考えたのです。これが臨界期発見のきっかけとなりました。

その後、ヒューベル、ブレークモア、ハッテンロッカー、グリーノウなどがネコやラットを使って似たようなことが言えることを発見しました。そして、それはヒトの言語習得についても言えるのではないかと考えたのがハーバード大学のエリック・レネバーグでした。


レネバークは「言語が容易に習得される時期は、ヒトの一生の中でも限られており、その期間は生後2才頃から思春期までであり、この期間中は、子どもは目標言語に十分接することで、母語、外国語を問わず、無理なく習得できる。」としました。そして言語習得に適したこの時期を臨界期(critical period) と呼びました。

その後、アメリカではジニー(仮名)という女の子の事例が報告されました。ジニーは2歳ごろから監禁状態で育てられ、13才で発見されたのですが、それ以降、専門家たちはいろいろな手を尽くして言葉を教えようとしたのですが、結局、言語理解や言語表現などが成人なみになることはありませんでした。


その後、アメリカに移民としてやってくる人々の入国年齢と英語習得能力の研究がなされ、いずれも早い段階で入国した人たちが高い英語力を身に付けることが報告されました(Johnson and New port、1989; Patkowski、1990など)。


ここまでみてくると、ヒトの言語も動物の実験と同じように、習得するのにふさわしい時期があるようにも思えます。

ところが、その後、Jia、Aaronson & Wu(2002)などが人種の影響と臨界期仮説を発表し、アメリカへの入国時期と英語能力の関係があるのはアジア系の学習者だけであって、ヨーロッパ系の学習者には年齢の影響がないことを発表しました。

もし、生物学的な理由で臨界期があるならば、ヨーロッパ系であっても、アジア系であっても、そのような差はないはずです。それには、さまざまな解釈が可能ですが、白井(2008)は、ヨーロッパ人はアメリカ人とは見かけでは区別がつかず、年齢がいっても親近感を感じて付き合いやすく、アジア系の人の場合は、年齢が低い場合は自意識も十分芽生えておらず、自然にアメリカ人と付き合っていくが、年齢が高くなるとアメリカ社会に適応せず、アジア系どうしで遊ぶ傾向があるからだとしています。

つまり、年齢というよりも、どれだけ英語社会に入り込み、英語を使ったかが重要であるということです。また、ヨーロッパ系の言語は言語的に英語と似たところもあって学び易く、年齢の影響はあまりないのではないかと考える研究者もいます。面白いですね。


みなさんはどう解釈しますか。興味を持たれたかたは、さらに放送大学でも学んでみて欲しいと思います。


 

(沖縄学習センター機関誌「キャンパスニライ100号」より)

 

機関誌『キャンパスニライ』バックナンバーはこちらから→https://www.sc.ouj.ac.jp/center/okinawa/about/magazine.html

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